Opera of the wastelandについて

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Opera of the wasteland」は、ガルパイベント「Neo Fantasy Online-旅立ち-」にて追加された楽曲だ。

このイベント自体は2018年1月22日の事。「軌跡」の発売を何とか早めたかったのだろうが、CD発売のスピードもかなり速く、2018年3月21日の事である。

それにも関わらず、この楽曲はRoseliaのライブで1度も披露されていない。

Roseliaの新曲演奏ペースはかなり速く、1度も披露されていないのは、「"UNIONS" Road」とこの曲のみである。

「"UNIONS" Road」は発売から1年も経っておらず、コロナ禍もあってライブの機会自体が少なかったのが理由だろう。

では、「Opera of the wasteland」が披露されなかったのは何故だろう。

中島由貴さんや志崎樺音さんが、いわゆる既存楽曲の習得に時間が必要だったというのもあるだろう。

しかし、僕はそこに3Dではなく2DRoseliaのストーリーを絡めた理由を提示したい。

 

 

キャラ曲

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まず、これは常識に近いかもしれないが、各キャラクターには「キャラ曲」と呼ばれるものがある。

氷川紗夜で言うところの「Determination Symphony」。今井リサで言うところの「陽だまりロードナイト」や「約束」。

イベントストーリーにおいて、メインとなったキャラとその時のイベントの曲とのリンク性から生み出される、曲に対しての1つの解釈の仕方である。

このキャラ曲という見方で「Opera of the wasteland」を見てみよう。この時のイベントはRoseliaの箱イベだが、その中でもメインとなったのは白金燐子と宇田川あこである。

この2人に共通した要素。宇田川あこの方がそれは強いだろうが、「晦冥の導き手」が最も相応しいだろう。

Opera of the wasteland」は、晦冥の導き手の曲なのである。

 

 

曲の持つ物語

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さて、「Opera of the wasteland」。英語のタイトルや歌詞を詳しく分析するには、日本語に訳してみるのが必須である。


「荒れ地の歌劇」


これがこの曲のタイトルである。

「歌劇」と言えば、最近ブシローダーと呼ばれ始めた皆さんには馴染み深い単語ではないだろうか?

「少女☆歌劇レヴュースタァライト」をイメージしてもらえれば分かりやすいが、「一部、あるいは全てを歌でのみ表現した舞台」の事である。

そう。この曲はある物語を表現しているのだ。

 


「そんなん分かっとるわボケェ!……ほいで、それがどないしたんや?」

 


そう思う方も多いだろう。

もちろんその通りだ。そもそも僕が前提として語ったキャラ曲という概念は、曲が物語を秘めている必要があるのだから。

しかし、曲が物語を秘めているのが当然だと思った方は、「Opera of the wasteland」にどのような物語を思っただろうか?

きっと、Roseliaの5人が「Neo Fantasy Online」、通称"NFO"をプレイした物語。初めて訪れるゲームの世界を、湊友希那がその感覚を持って描写した曲。

このように思った事だろう。

僕もそうだった。

そう、"だった"のである。

Opera of the wasteland」に、先に示したキャラ曲と晦冥の導き手という概念を合わせると、見える物語は変化してくる。

 

 

あこの語彙力

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見えてくる物語のためにもう1つ必要な要素がある。それは、ガルパイベント「貫く闇、青薔薇の誇り」である。

ストーリーの概略は、宇田川あこが自身の思う「カッコイイ」、すなわちRoseliaの魅力を他人に紹介しようと奮闘するというものだ。

この時の宇田川あこは、傍に白金燐子がいないため、語彙力の低さゆえに上手く説明できていなかった。

青葉モカの助力を得て出来上がったものでも、世界観がかなり独特となっており、かなり読解の難しい内容となった。

このストーリーで僕が注目したいのは、「宇田川あこは1人でRoseliaの説明をする時、語彙力の無さと厨二病が作用して、まるでゲームや異世界の描写をしているようになる」という要素だ。

 

 

曲の再生産

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結論を示す前に、少し話は脱線するが、僕の楽曲に対する見方を説明させて欲しい。

そもそもBanG Dream!というコンテンツの下に作られた曲は(もちろん他の様々な曲もそうかもしれないが)、キャラ曲という概念が示す通り、1つの物語や意味を持つ。

Roseliaの「BRAVE JEWEL」が、アニメ2期で揺らいだPoppin'Partyへのエールソングとなったように。

Poppin'Partyの「Step×Step!」が、アニメ3期で朝日六花の背中を押したように。

しかし、ここからが本質だが、それらの楽曲の意味は変化する余地がある。スタァライト風に言えば、再生産される可能性を秘めている。

僕が以前の記事に書いたように、「夢を撃ち抜く瞬間に」が、3バンドでの演奏でそれぞれに属性を与えたように。

キラキラだとか夢だとか〜Sing Girls〜」が、アニメ1期のエンディングからアニメ2期で、朝日六花へ贈られたように。

その曲が演奏される状況。

その曲を演奏するメンバー。

そこに至るまでのストーリー。

それらを加味すると、全く違う意味や物語を持つようになる。

これが僕の、楽曲に対する見方である。

 

 

なぜ演奏されないのか?

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さて、ここまで読めば鋭い人は、僕の言わんとしている事が分かっているかもしれない。

手っ取り早く結論を言おう。

 


Opera of the wasteland」は、RoseliaがFWFに立った後に、バラバラになり、その姿が誰からも忘れ去られた時に、宇田川あこの手によって思い出させるための曲ではないだろうか。

 


そもそも宇田川あこに与えられた要素である「晦冥の導き手」は、バンドストーリー2章で、Roseliaを見失うメンバーの中で唯一、その本質を見失わなかったがゆえの要素なのだ。

「ノーブル・ローズ-歌、至りて-」にて、LOUDERを封印する際にも、必要になれば思い出させる役目を背負っていたのも宇田川あこだ。

つまり、「Opera of the wasteland」のゲームや異世界を感じさせる歌詞は、曲の再生産をふまえると、語彙力の足りない宇田川あこらしい歌詞になるのだ。

白金燐子との約束。その際にも「万一の時には蘇生魔法をかける」という、ゲームを意識した言葉が使われている。

そしてそこから読み取れるのは、あくまで白金燐子はヒーラー。前線で剣を振るうのは宇田川あこ、という役割だ。

もう1つ。NFO内での宇田川あこのジョブは、ネクロマンサー。死霊使いとはよく言ったもので、死霊を使うという事は、「失われた存在を呼び戻す」事に他ならない。

 

だからこそ、「Opera of the wasteland」はRoseliaが誰からも忘れられるような危機に陥った時にこそ演奏される曲ではないだろうか。

 

これが最初の疑問の僕なりの答えだ。

ゲーム風に言うならば、「とっておきの切り札」、「超必殺技級の隠し球」といった感じだろうか。

湊友希那が青薔薇を使った理由

僕が考えるRoseliaの湊友希那の作詞のルールは、自明の理、言うまでもない事柄は歌詞にしないという事だ。

 

(この根拠については、以前書いた「無敵で最高で最強の歌」を参考にしてほしい)

 

つまり、このルールの下で作詞される曲に、青薔薇という単語が入ることには違和感が生まれる事になる。

 

Break your desireにおいて、この違和感が生じた理由は何だろう?

 


R

この事について考える前に、もう1つの例外について考える。

 

そう、Rの事だ。

 

Rの歌詞には、青薔薇とまではいかないまでも、Roseや薔薇という単語が使われている。

湊友希那の作詞ルールからすると、これも少々違和感がある。

 

では、なぜ湊友希那はRに薔薇という単語を使ったのだろう?

 

RはRoseliaの楽曲の中で唯一、ストーリーも存在せず、かといってOPやEDになった曲でもない。

 

だが、このRは3DRoseliaにとって大きな意味を持つ。

 

そもそもこの曲の演奏。音楽にそこまで詳しい訳ではないが、ベースメインで始まり、キーボードの音で終わるという構成のはずだ。

 

ベースで始まり、キーボードで終わる。

 

Rが初披露されたのは、ファンミーティングのライブパートの時だ。

ではこのライブの持つ意味とは?

 

Roseliaのベース、中島由貴さんの最初のライブであり、Roseliaのキーボード、明坂聡美さんの最後のライブ。

 

ベースの始まりとキーボードの終わり。

 

この曲は、湊友希那から3DRoseliaへのメッセージと捉えられる。

 

遠藤ゆりかさんと明坂聡美さんは、それぞれ対極に位置する解釈を残している。

 

遠藤さんは、自分はいつも中島さんの隣でベースを弾いている気持ちでと。

明坂さんは、自分を含めてRoseliaとは言わないで欲しいと。

 

異なる2つの解釈は、Roseliaの形そのものを揺らがす程の差異となったはずだ。

だからこそVireにて、晦冥の導き手たる宇田川あこである櫻川さんが、1つの道へと導いたはずなのだから。

 


2つの特徴

上記の事を念頭に置くと、湊友希那が薔薇という歌詞を使う時の特徴が見えてくる。

 


Roseliaが根底から揺らぐ時

・薔薇を誇張する必要がある時

 


Rの時はこの両方が当てはまっただろう。

ではもう1つの特異、Break your desireはどうなのだろう。

 

1つ目の可能性から。

Roseliaが根底から揺らいでいただろうか?

 

答えはNOだ。

 

総選挙のタイミングは、FWFの直後。

ましてや宇田川あこが晦冥の導き手という自覚を持ち、Roseliaの大切さを痛感した湊友希那がいる状況下で、Roseliaが揺らぐ事は考えずらい。

 

ならばもう1つの可能性。

 

薔薇を誇張する必要がある時。

 

これは検討の価値がある。

これを考える上で、もっとガルパライフ第212話「伝わる情熱」がとても参考になる。

 

このガルパラ内で使われる、"花咲かロゼリア"という概念。

Roseliaに憧れてバンドを始めた人達がいたようだ。これが総選挙のテーマともなった対バンの相手だろう。

 

注目したいのは今井リサの言葉。

 

「アタシ達は通ってきた道だけじゃなくてその周りにも花を咲かせて来てたんだね」

 

つまり、この時の対バン相手の足元には花が咲いていたのだ。

 


打ち砕く望み

少し話題を変えて、Break your desireというタイトルについて。

意訳すると、「あなたの望みを打ち砕く」となる。

 

この、打ち砕く望みとは何だろう?

 

Roseliaと対バンをしたいという望みだろうか?

 

違うだろう。

 

湊友希那が見るのは、対バンをしたいという意志ではなく、そこに存在する覚悟なのだ。だからこそ湊友希那は対バン相手にこう問う。

「すべてを賭ける覚悟はある?」と。

 

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重要なのは、対バン相手はRoseliaに憧れてバンドを始めた人達だという事だ。

憧れてバンドを始めたならば、こう思うのではないだろうか?

 

Roseliaのようなライブがしたい。」

 

アニメ2nd season第2話「黒き咆哮」にて、Poppin'Partyですらそう思ったのだ。初期衝動がRoseliaな人物ならば、そう考える事に違和感はない。

 


湊友希那が砕きたいのは、この考えではないだろうか?

 

模倣ではなく、オリジナル。

 

自身が父の歌を初期衝動とし、しかしその形は模倣ではないように。Roseliaという自分達だけの道を見つけた湊友希那。

そんな彼女だからこそ、自分達を模倣したライブをしたいという"望み"を打ち砕くのではなかろうか。

 


伝える想い

最初の話題に戻ってみよう。

なぜ湊友希那は、Break your desireに青薔薇という歌詞を使ったのだろう?

 


・薔薇を誇張したかった。

・対バン相手の足元には花が咲いていた。

・模倣ではないライブを期待する。

 


この3点を含めて考えると、Break your desireは、そのタイトルに反して、湊友希那なりのエールソングではないだろうか。

 

歌詞の中で誇張された青薔薇は、Roseliaを指すのではなく、対バン相手の足元に咲いた花のこと。

 

今井リサに語ったように、足元に咲いた薔薇の道を行く人には、その人にしか見えない景色がある。

 

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これに気付けない人物へのヒントとして、青薔薇を誇張する必要があった。

 

こう考えれば、Break your desireに青薔薇という歌詞が使われた理由も納得がいくのではないだろうか。

涸れ井戸のScope

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水があれば井戸は覗き込む物である。

それをscopeとして使うならば、そこに反射する空を見ることになるだろう。

一方で、涸れ井戸をscopeとして使うのならば、井戸の底に立つ必要がある。

井戸の底に立った経験はないが、おそらく四角形に切り取られた空が見える事になる。

 

ここで大前提として、涸れ井戸のScopeという歌詞が使われているHello Wink!について。ハロウィンの時に作られた曲なのだから、その時間帯は夜と推測される。

 

 

夜に空を見上げれば何があるか?

 

言うまでもなく星空だ。

 

 

この段階で星空を見上げる存在とは?

 

Poppin'Partyは学年が上がり、後輩を持つことで、星を追うだけの存在ではなくなってきている。

それは無意識なのかもしれないが、かつて戸山香澄がGlitter*Greenを見た時のように、誰かの星空になってきている。

 

 

ではHello Wink!におけるその存在とは?

 

イベントストーリー、Poppin'ハロウィンパレードにて、自身の所属するバンドが実装すらされていないにも関わらず、登場した人物がいた。

 

幸いにもハロウィンなので、日付けが特定できる。朝日六花がLOCKになったのは、この日よりも後の話だ。

 

 

井戸の話に戻ろう。

前述の通り、井戸の中に入ったことはないが、井戸の横幅なんてたかが知れている。

それこそ、"立ちすくんで動けなくなる"程に狭いだろう。

何かと共通するところが多い戸山香澄と朝日六花。

 

涸れ井戸の中にいるのは誰なのだろう?

 

 


ここで古典的な知識を1つ。

"掛詞"と呼ばれるものがある。

和歌の修辞技巧の1つで、同音意義を利用し、1つの単語に複数の意味を含ませる技法である。

これを使う上で重要なのは、この修辞技巧が使われた場合、どちらの意味も含めて現代語訳しなければならない。

 

 

もう1つ、今度は英単語の知識。
英語の固有名詞として、カレイドスコープというものがある。日本語訳すると、"絶えず変化するもの"となる。

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"涸れ井戸のScope"と"カレイドスコープ"。少々こじつけ感は否めないところではあるが、掛詞として考えてみる。

 


最初に述べた通り、井戸の底から星空を見上げる存在については、戸山香澄以外にも当てはめることができる。

 

そして"絶えず変化するもの"。

 

この2つを掛け合わせた意味をとると、"見上げる星空も見上げる人物も、絶えず変化している"というニュアンスが汲み取れる。

 


見上げる存在の変化。

 

SPACEでのGlitter*Greenのライブに、戸山香澄は自身の求めた星の鼓動を見出した(アニメBanG Dream!第1話「出会っちゃった」より)。

 

一方で、SPACEでのラストライブを見た朝日六花も、そこに星空を見出した(RAiSe!EP01ラストライブより)。

 


そして、見上げる星空も変化し続ける。

見上げるだけだった戸山香澄が、誰かに星空を見せたように。

朝日六花や倉田ましろのように、星になれる可能性を秘めた人物が現れた事も、その根拠となるだろうか。

 


イニシャルで示された、日常と非日常の混ざり合い。それはさながら六花とLOCKを隔てる壁を示すようで。

 

そして、Hello Wink!の持つ非日常の可能性。

これらを含めると、Hello Wink!はStep×Step!への伏線ともとれるのではないだろうか。

無敵で最高で最強の歌

Yes!BanG_Dream!の歌詞に登場する歌の肩書きである。

今回、何の話をしたいかというと、Yes!BanG_Dream!とその対となる曲、"夢を撃ち抜く瞬間に"の関連性である。

 

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☆対となる2曲

2曲の関連性を示す前に、この2曲が対となると考える根拠を示したいと思う。

根拠は大きく分けて2つある。それぞれ細かく以下に示す。

 


・歌詞の同意性

2曲の歌詞の中には、全く同じものであったり、意味としては殆ど同じものが見られる。

歌詞の一例を下で示す。


"夢を撃ち抜く瞬間にキミは何を思うの"

〜「夢を撃ち抜く瞬間に」〜

これは問いかけだが、夢を撃ち抜く瞬間の心情を問うのならば、質問者もそのそばにいる可能性が高い。

 

"今、夢を撃ち抜く瞬間にドキドキときめくキミを見てる"

〜「Yes!BanG_Dream!」〜

一方で、Yes!BanG_Dream!でも、夢を撃ち抜く瞬間のキミのそばにいる可能性の高い歌詞が存在する。


更に、タイトルにも同じ事が言える。

"Yes!BanG_Dream!"。日本語訳してみると、"夢を撃ち抜け!"となる。

これはコンテンツ自体のタイトルに帰属している。

 

一方でこちらは言うまでもないが、"夢を撃ち抜く瞬間に"も、夢を撃ち抜くという単語がある点で、BanG Dream!に帰属している。


歌詞に注目してみると、他にも発見できるが、今回示すのはこの2例に留める。

このように、歌詞や果てにはタイトルまで、同意性を持つものが多い。

これが、対となると考える根拠の1つである。

 


・BanG_Dream!の名のもとに

小説版のストーリー、と言えばご存知だろうか?これはここで解説しないので、知らない方は読んでから再度こちらを訪れていただく事を推奨する。

 

小説版のストーリーでは、Yes!BanG_Dream!はPoppin'Partyのメンバーを繋いだ歌だ。

それぞれがそれぞれにこの歌と出会い、最後に戸山香澄によって完成された。

 

一方で、アニメ3期の最終話にて披露された"夢を撃ち抜く瞬間に"。ストーリー上では、BanG Dream!Girls Band Challengeの非公式テーマソングとして作られる。

 

3バンドでのステージ。まさしく3期での主要メンバーを繋いだと言える。

そしてこちらも同様に、湊友希那、チュチュの2人に直談判に向かった、戸山香澄達によって完成されたといえる。

 


以上2つの根拠より、Yes!BanG_Dream!と"夢を撃ち抜く瞬間に"の2曲は、対となる曲であると言える。

 


☆歌の属性

上で2曲が対となる事を示したいと訳だが、最初に記した通り、その関連性を示したい。

 

具体的には、歌に付与された属性の話である。

 

無敵、最高、最強。Yes!BanG_Dream!には、この3つが歌に付与されている。

しかし、"夢を撃ち抜く瞬間に"では、"無敵"以外の2つは消えてしまっている。

 

先に示した通り、対となり共通点も多い楽曲同士でのこの差異。ここに注目したいと思う。

 


☆湊友希那の関わり

"夢を撃ち抜く瞬間に"は、ポピパが作った曲だが、その最終的な制作過程には、湊友希那も携わっている。

つまり、歌詞には戸山香澄のルールだけでなく、湊友希那のルールも少なからず使われていると考えられる。

 

では、湊友希那の歌詞。そのルールとはどのようなものだろうか?

 

その片鱗はガルパイベント、いつか届けアタシの詩、ノーブル・ローズ-花々を連れて-にて見る事ができる。

このイベントでは、どちらも今井リサが作詞にチャレンジしている。

しかし、Rose-lisa及びノーブル・ローズにて最初に作られた曲は、どちらも湊友希那は歌えないと言っている。

 

ではこの2つに共通し、湊友希那が今までRoseliaとして書いた歌詞と違う点は何だろうか?

今井リサ作詞の2曲は1フレーズしか登場していないが、それは容易に見つかった。

 


"月の光かすかに照らす、青い薔薇の物語"

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"青薔薇 咲き誇る庭園"

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湊友希那が過去にRoseliaとして作詞した楽曲の中に、"青薔薇"という単語はただの1度も登場していない。

 

おそらくこれが、湊友希那が今井リサの2曲を歌えない理由の1つと思われる。

その証拠に、ノーブル・ローズで今井リサが完成させた"約束"には、青薔薇という単語が存在しない。

 

ここからうかがえる湊友希那の作詞におけるルール。自明の理であり、言うまでもなく、伝えるまでもない事柄は、歌詞に書かないという事である。

青薔薇という単語は、Roseliaとしてステージで演奏する以上、わざわざ歌詞にしてまで言う必要がないのである。

 

以上の事を湊友希那のルールとすると、"夢を撃ち抜く瞬間に"で最高、最強の単語が消えたのは、この2つの属性は目に見えて明らかになったからだと考えられる。

 


☆最高と最強

では、2つの属性を背負った目に見えて分かる存在とは何だろうか。

 

Yes!BanG_Dream!が完成した時には無かった要素。

 

考えられる答えとは、Roselia、RAISE A SUILENの2バンドである。

 

この2バンドが、最高、最強の属性を背負っていたと思われる。

 

どちらがどちらだろう?

 

個人的な考えになるが、最高がRoselia。最強がRASだと思う。

 

Roseliaが最高と考える理由だが、彼女達が目指す先は頂点。そして、FWFを超えた先にある、更なる高みである。

頂点とは、最も高い場所と解釈する事もできる。ともすれば、最高という属性がRoseliaに付与されていてもおかしくはないだろう。

 

ならば残る最強はRASに付与される事になる。理由は単なる消去法ではない。

チュチュのセリフ、

「私の最ッ強の音楽で、大ガールズバンド時代を終わらせる!」

から、チュチュ自身も自分達の事を最強と自覚していると思われる。

 

また、Takin' my heartの歌詞、"虚勢を張るおまじない"から分かる、表面上の強さを見せているチュチュ。だからこそ高みではなく、強さを表す属性を付与されたと考えられる。

 

更に、あくまで単語の消失による属性の付与は、湊友希那のルールである。

そのため、最強をRASに当てはめるにあたって、それは自称ではなく、湊友希那のRASへの印象という事になる。

ただの強さだけでは高みに立てない。

湊友希那が、ガルパのバンドストーリー2章で感じた事である。

だからこそ、RASを表す属性として最高ではなく最強が選ばれたのではないだろうか。

 


☆無敵の歌

最高、最強の2つが消えた理由はご理解頂けただろう。

ならば、残る1つの属性。無敵が残った理由は何だろう?

 

まず、この属性が当てはまる存在を考える。考えるまでもなく、Poppin'Partyである。

 

"スターを纏えば無敵になれる"とは、小説版の内容からの引用であるが、戸山香澄は星を纏っていれば無敵なのである。

そして、戸山香澄が繋いだPoppin'PartyのメンバーはSTARなのである。Poppin'Partyとしている限り、戸山香澄は常に星を纏った無敵状態である。

 

ならばこそ、Poppin'Partyに付与されるべき属性は無敵としてもおかしくはないだろう。

 

では改めて、これを歌詞に残す理由は何だろう?

 

2つの属性が消えた理由は、湊友希那の作詞のルールである。ならば、残った理由も誰かの作詞のルールと考えられる。

 

"夢を撃ち抜く瞬間に"の作詞に携わったのは、戸山香澄と湊友希那である。ならば、残したルールは戸山香澄のものとなる。

 

戸山香澄の作詞のルール。これもイベントストーリー、"いつか届けアタシの詩"の中にて語られている。

 

日常の中に存在するキラキラドキドキを伝える。周りに伝わるように歌詞にする。

 

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そんなルールを適用しているのならば、自明の理であろうとも歌詞にする事に納得がいく。

これが無敵が残った理由と考えられる。

 


☆明日の歌

ここまで述べてきた3つの属性は、Yes!BanG_Dream!にあった属性である。

しかし"夢を撃ち抜く瞬間に"では、新たな属性である、"明日"が増えている。

 

歌詞に存在する以上、戸山香澄のルールによって作られた属性だと思われるが、ならばその対象は何なのか。

 

答えは"全て"でどうだろう?

 

"夢を撃ち抜く瞬間に"が披露された武道館のステージ。あのステージが3バンドに与えた意味。

 

 

DJチュチュを、真の意味で加えた完全なRAISE A SUILENの誕生の瞬間。

 

頂点を目指すRoseliaの、終わる事の無い道の途中。

 

未来へ物語を紡ぎ、新たな人物を乗せて進むPoppin'Partyの列車の通過駅。

 

 

これらに共通して言えるのは、"終わり"がない事である。

終わりがない。言い換えれば、明日へと進む事である。

"全て"に対して付与されるべき属性として、違和感はないだろう。

 


☆In the name of BanG_Dream!

「星の鼓動はみんなだった。」

そんな戸山香澄の言葉を鑑みると、ポピパのメンバーだけでなくRoselia、RASと披露した"夢を撃ち抜く瞬間に"は、無敵の歌だろう。

元来、無敵に到達してしまえば、そこで終わるのが定石である。

 

しかし、彼女達は止まらない。

 

CiRCLINGが如く絶えない彼女達の物語を、BanG Dream!を知る者として見守っていきたい。

 

「前へススメ!」について

Poppin'Partyのオリジナル楽曲、「前へススメ!」だが、これはアニメ1期の11話にて本当の完成を果たした楽曲だ。SPACEのオーディションに合格するために披露した楽曲。しかし、香澄はスランプに陥り歌えなくなってしまう。そんな香澄を支えるために有咲、沙綾、たえの提案で歌い分けることに。本来ならば「前へススメ!」は他の楽曲と変わらず、香澄1人で歌うものだったようだ(もちろんコーラスは入るだろうが)。CD化されているものも全員で歌っている。全員で歌うことによりそれぞれの担当する箇所の歌詞がそのキャラクターに当てはまっているが、これを香澄1人で歌っていた場合、原作小説の香澄を表現していると思える捉え方ができる歌詞が多いと感じる。

 


「好きで好きでたまらないよ

今すぐ扉開けたいよ

でも踏み出せないのは何故」

 


りみが担当するパートである。引っ込み思案で自分なんかが演奏に加わっても迷惑なだけだと思っていたりみ。バンドをやりたい気持ちを隠してしまう。これを香澄が歌うと、こう解釈できる。「歌うことが"好きで好きでたまらない"。でも歌うことが好きじゃないと言ってしまった自分は"踏み出せない"。」そう、原作小説の香澄の気持ちを痛切に表していると言える。

 


「だけど3つのコードから

君と一つになれたよね

もう夢はみんなのもの

この心震わせたい」

 


たえの担当パート。ずっと1人でギターを弾いていたたえ。けれど"3つのコード"、つまり香澄、有咲、りみの3人がバンドに誘ってくれた。蔵でのライブで"心を震わせ"てくれた。その思いが感じられる。これを香澄に置き換えてみる。原作小説内にて香澄が最初に弾いて歌った曲は「きらきら星」を自分でアレンジした「トゥインクル・スターダスト」。これは有咲からの"小心者の序曲"その三にて課せられたミッションである。そのミッションの内容とは"スリーコードの曲を演奏すること"だった。"スリーコード"つまり、"3つのコード"だ。この演奏を聞いた有咲は「才能の開花する瞬間を見た気がした」と評している。また、それまで育成ゲームとしてみていた世界が自分の物語と繋がったとも感じていた。つまり、"夢はみんなのもの"となった瞬間である。

 


「正直になれそうな自分に

君が微笑んだ」

 


有咲の担当パート。元々正直になるのが苦手な有咲がバンドをやっていて、香澄達と出会えて「悪くなかった」と感じていたことを表している。香澄の場合は「歌が好きな自分に"正直になれそうな"自分に"君が"、つまり机の上での文字だけのやり取りだったが、沙綾が"微笑ん"でくれたように感じた」というところだろう。

 


「あの日のこと忘れないよ

背中を押してくれた君

夢がなきゃもう生きられない」

 


りみのパート。バンドをやることを躊躇っていたりみに堂々ときらきら星を歌うことで"背中を押し"た香澄への想いを表している。香澄の場合は「"あの日のこと"つまり、有咲の前で歌ったあの日。歌うことが怖かった香澄を沙綾は勇気づけ、"背中を押してくれた"。」というところだろう。その演奏で香澄達は"夢"を見つけている。

 


「過去の全てにとらわれた日々

一人悩むのは止めよう」

 


沙綾の担当パート。自分のせいで迷惑をかけてしまった"過去"に"とらわれ"ていた沙綾が香澄に「一人で考えるなんてズルい!一緒に考えさせてよ…」と1人で悩まないことを決めたことを表している。香澄に置き換える。「"過去"に歌うことが好きじゃないと言ってしまった自分に"とらわれ"ず、一人で悩まずにみんなと同じ道を走ると決めた」ということだろう。

 


このようにポピパ全員で歌うと、アニメ1期のメンバーを表しているが、香澄が1人で歌ったと考えると原作小説)の香澄を表しているとも捉えることが出来る。

 

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