湊友希那が青薔薇を使った理由

僕が考えるRoseliaの湊友希那の作詞のルールは、自明の理、言うまでもない事柄は歌詞にしないという事だ。

 

(この根拠については、以前書いた「無敵で最高で最強の歌」を参考にしてほしい)

 

つまり、このルールの下で作詞される曲に、青薔薇という単語が入ることには違和感が生まれる事になる。

 

Break your desireにおいて、この違和感が生じた理由は何だろう?

 


R

この事について考える前に、もう1つの例外について考える。

 

そう、Rの事だ。

 

Rの歌詞には、青薔薇とまではいかないまでも、Roseや薔薇という単語が使われている。

湊友希那の作詞ルールからすると、これも少々違和感がある。

 

では、なぜ湊友希那はRに薔薇という単語を使ったのだろう?

 

RはRoseliaの楽曲の中で唯一、ストーリーも存在せず、かといってOPやEDになった曲でもない。

 

だが、このRは3DRoseliaにとって大きな意味を持つ。

 

そもそもこの曲の演奏。音楽にそこまで詳しい訳ではないが、ベースメインで始まり、キーボードの音で終わるという構成のはずだ。

 

ベースで始まり、キーボードで終わる。

 

Rが初披露されたのは、ファンミーティングのライブパートの時だ。

ではこのライブの持つ意味とは?

 

Roseliaのベース、中島由貴さんの最初のライブであり、Roseliaのキーボード、明坂聡美さんの最後のライブ。

 

ベースの始まりとキーボードの終わり。

 

この曲は、湊友希那から3DRoseliaへのメッセージと捉えられる。

 

遠藤ゆりかさんと明坂聡美さんは、それぞれ対極に位置する解釈を残している。

 

遠藤さんは、自分はいつも中島さんの隣でベースを弾いている気持ちでと。

明坂さんは、自分を含めてRoseliaとは言わないで欲しいと。

 

異なる2つの解釈は、Roseliaの形そのものを揺らがす程の差異となったはずだ。

だからこそVireにて、晦冥の導き手たる宇田川あこである櫻川さんが、1つの道へと導いたはずなのだから。

 


2つの特徴

上記の事を念頭に置くと、湊友希那が薔薇という歌詞を使う時の特徴が見えてくる。

 


Roseliaが根底から揺らぐ時

・薔薇を誇張する必要がある時

 


Rの時はこの両方が当てはまっただろう。

ではもう1つの特異、Break your desireはどうなのだろう。

 

1つ目の可能性から。

Roseliaが根底から揺らいでいただろうか?

 

答えはNOだ。

 

総選挙のタイミングは、FWFの直後。

ましてや宇田川あこが晦冥の導き手という自覚を持ち、Roseliaの大切さを痛感した湊友希那がいる状況下で、Roseliaが揺らぐ事は考えずらい。

 

ならばもう1つの可能性。

 

薔薇を誇張する必要がある時。

 

これは検討の価値がある。

これを考える上で、もっとガルパライフ第212話「伝わる情熱」がとても参考になる。

 

このガルパラ内で使われる、"花咲かロゼリア"という概念。

Roseliaに憧れてバンドを始めた人達がいたようだ。これが総選挙のテーマともなった対バンの相手だろう。

 

注目したいのは今井リサの言葉。

 

「アタシ達は通ってきた道だけじゃなくてその周りにも花を咲かせて来てたんだね」

 

つまり、この時の対バン相手の足元には花が咲いていたのだ。

 


打ち砕く望み

少し話題を変えて、Break your desireというタイトルについて。

意訳すると、「あなたの望みを打ち砕く」となる。

 

この、打ち砕く望みとは何だろう?

 

Roseliaと対バンをしたいという望みだろうか?

 

違うだろう。

 

湊友希那が見るのは、対バンをしたいという意志ではなく、そこに存在する覚悟なのだ。だからこそ湊友希那は対バン相手にこう問う。

「すべてを賭ける覚悟はある?」と。

 

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重要なのは、対バン相手はRoseliaに憧れてバンドを始めた人達だという事だ。

憧れてバンドを始めたならば、こう思うのではないだろうか?

 

Roseliaのようなライブがしたい。」

 

アニメ2nd season第2話「黒き咆哮」にて、Poppin'Partyですらそう思ったのだ。初期衝動がRoseliaな人物ならば、そう考える事に違和感はない。

 


湊友希那が砕きたいのは、この考えではないだろうか?

 

模倣ではなく、オリジナル。

 

自身が父の歌を初期衝動とし、しかしその形は模倣ではないように。Roseliaという自分達だけの道を見つけた湊友希那。

そんな彼女だからこそ、自分達を模倣したライブをしたいという"望み"を打ち砕くのではなかろうか。

 


伝える想い

最初の話題に戻ってみよう。

なぜ湊友希那は、Break your desireに青薔薇という歌詞を使ったのだろう?

 


・薔薇を誇張したかった。

・対バン相手の足元には花が咲いていた。

・模倣ではないライブを期待する。

 


この3点を含めて考えると、Break your desireは、そのタイトルに反して、湊友希那なりのエールソングではないだろうか。

 

歌詞の中で誇張された青薔薇は、Roseliaを指すのではなく、対バン相手の足元に咲いた花のこと。

 

今井リサに語ったように、足元に咲いた薔薇の道を行く人には、その人にしか見えない景色がある。

 

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これに気付けない人物へのヒントとして、青薔薇を誇張する必要があった。

 

こう考えれば、Break your desireに青薔薇という歌詞が使われた理由も納得がいくのではないだろうか。